補助金

補助金でよく見る「付加価値額」って、結局なに?

2026/10/3

補助金を検討したいけど、公募要項に出てくる数字がよくわからない。数字が苦手な社長のために、補助金にまつわる「数字」をなるべくわかりやすく紹介したいと思います。

私も、以前は財務や会計がとても苦手でした。なじみのない言葉が並ぶと、数字を見る前から身構えてしまう。なので、できるだけ苦手な人の目線で説明してみたいと思います。

今回のテーマは、補助金の公募要領で見かける「付加価値額」です。

「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回・2026年)」では、これを「年平均4%以上増やす」と書いてあります。

なんとなく大切そうなのはわかります。でも、「付加価値」といわれると…商品の魅力のことなのか、利益のことなのか、会計になじみがないと別の意味に捉えてしまいそうになります。

架空の金属加工会社の数字を使って、この言葉をほどいてみます。

付加価値額は、三つの足し算です

「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、付加価値額を次の合計としています。

営業利益+人件費+減価償却費

それぞれ、ざっくり説明すると、

  • 営業利益:本業の売上から費用を引いて、残った利益。

  • 人件費:給与など、働く人にかかる費用。

  • 減価償却費:機械などの購入費を、その設備を使う期間に分けて費用にしたもの。

これだけでは、まだピンとこないかもしれません。売上のどこにある数字なのか、見てみましょう。

年商1億円、8人で営む金属加工会社で考えます

社長1人と従業員7人で、機械を使って金属部品を加工している会社を想定します。

比較の出発点となる「基準年度」の年間売上は1億円。人件費は、社長を含む8人分を合わせて3,500万円です。給与・賞与や役員報酬、会社負担の社会保険料等を含む年間費用として置いています。

その会社の売上と費用を、次のように整理してみます。

項目

年間の金額

売上に占める割合

売上高

1億円

100%

変動費

4,000万円

40%

その他の固定費

1,500万円

15%

人件費

3,500万円

35%

減価償却費

500万円

5%

営業利益

500万円

5%

※説明用の架空のものとして、人件費と減価償却費は、すべて固定費として扱います。

「変動費」は、材料費や加工量に応じた外注費など、売上や生産量に応じて増減する費用です。

売上から、この変動費を引いた残りを「限界利益」と呼びます。

聞き慣れない言葉ですが、まずは、

変動費は「原価のようなもの」。
限界利益は「粗利のようなもの」。

と捉えてみてください。

厳密には違う場合もありますが、ここでは「売上1億円から材料費などの4,000万円を差し引くと、6,000万円が残る」と分かれば大丈夫です。

ただ、この6,000万円を、そのまま社員の給与や設備の費用、会社の利益に充てられるわけではありません。工場の家賃など、ほかにも必要な経費があります。

今回の例では、そうした「その他の固定費」が1,500万円。それを差し引いて残るのが、4,500万円です。

その内訳は、

人件費3,500万円+減価償却費500万円+営業利益500万円。

この三つの合計が、補助金でいう「付加価値額」です。

人にかかる費用と、設備を使うための費用を負担し、そのうえで会社に利益を残す。その全体で、どれだけの稼ぎ(価値)を生み出しているか。

補助金では、この合計額が成長するかを見ている、と考えてみてください。

年平均4%。5年後には、どれくらい?

「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、この付加価値額を年平均4%増やすことが求められています。

では、この会社の付加価値額4,500万円を、年平均4%で増やしてみましょう。

期間

計算

付加価値額

基準年度からの増加

基準年度

—

4,500万円

—

1年後

4,500万円×1.04

4,680万円

180万円

3年後

4,500万円×1.04³

約5,062万円

約562万円

5年後

4,500万円×1.04⁵

約5,475万円

約975万円

4%は、一度だけ足すわけではありません。増えた数字に、さらに4%を重ねる複利の計算です。

5年後には、年間で約975万円多く、付加価値を生み出す会社になります。基準年度からの増加率は、約21.7%です。

4%という数字は小ぶりですが、会社の金額にすると、なかなかの存在感があります。

なお、実際の要件は、基準年度と最終年度の数字から年平均成長率を計算します。毎年必ず4%ずつ増やす必要がある、という意味ではありません。

では、売上はいくら必要なの?

ここからは逆算です。

この会社は、売上1億円から変動費4,000万円を引き、限界利益6,000万円が残っています。

つまり、売上の60%が「粗利のようなもの」として残る会社です。この割合を「限界利益率」と呼びます。

5年後の付加価値額を約5,475万円にするには、工場の家賃などの「その他の固定費」1,500万円も加え、必要な限界利益は約6,975万円になります。

この約6,975万円を確保するために、売上全体はいくら必要でしょうか。

計算すると、

(付加価値額約5,475万円+その他の固定費1,500万円)÷60%
=必要売上 約1億1,625万円。

基準年度の売上1億円から、約1億1,625万円へ。5年後の年間売上を約16.2%増やす必要があると分かります。

もし材料費が高騰したら、どうなるのか?

ただし、この逆算には「売上の60%が残る(限界利益率60%)」という前提で考えています。

もし材料の仕入価格が上がり、販売価格は据え置きだったらどうでしょう。同じ金額を売っても、残る割合は小さくなります。

反対に、材料のロスを減らしたり、販売価格を見直したりできれば、残る割合を高められるかもしれません。

目標の付加価値額が同じでも、必要な売上は変わってきます。

限界利益率55%の場合と65%の場合では、必要な売上に約1,951万円の差が出ます。

つまり、現在の基準で、単純に「売上を増やせばよい」というわけではないのです。

特に、物価が高騰している今、仕入価格は自社の努力だけでは決められません。だからこそ、「今の割合で残る場合」と「材料費などが上がって、残る割合が下がる場合」の両方を計算しておきたいところです。

付加価値額を、超解釈すると

補助金における「営業利益+人件費+減価償却費」を超解釈してみると

「設備投資を応援します。その設備を使ってしっかり稼ぎ、社員の給料にも回し、会社にも利益を残してください。」

というシンプルなメッセージとして読むことができます。

補助金を検討するうえで、付加価値額という要件が決められているので、その達成のために「人件費はいくらにしよう」「営業利益はこれくらい必要だ」と計算すると思います。

でも、そこで止めず、もう一段さかのぼってみてください。

その数字を実現するために、売上はいくら必要なのか。材料費や外注費が上がっても成り立つのか。人件費や設備の費用を負担したあと、十分な利益が残るのか。

そして、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、補助金事業の目的は以下のように記載されています。

『技術的革新性のある製品・サービスの開発や既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化を後押しすることで、中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的とします』

既存事業の拡大や延長ではなく、市場創造こそが目的です。いわば、これまでとは勝手が違うフィールドで、先ほどの数字を達成できるような戦略を考えないといけないのです。これは、けっこう難しいことを求めていると思います。付加価値額には、そんな補助金の狙いも読み取れます。

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